NEC「PLMシステムグループ」の次世代をリードする若手にインタビュー。miitの写真心理学体験は、実際どうだった?【後半】

NEC「PLMシステムグループ」の次世代をリードする若手にインタビュー。miitの写真心理学体験は、実際どうだった?【後半】

(写真は右から、紅野さん、林さん、府金さん)

明治32年創業の電機メーカーで、売上年間約3兆円、全世界に約12万人の従業員を抱える日本電気株式会社(通称:NEC)。その中の製造システム統括部PLMシステムグループにて、2022年10月〜11月に「miit」を導入いただき、セッションを実施しました。

今回のセッションには、これからのPLMシステムグループを引っ張っていく若手メンバー6名が参加。

インタビューの前半では、もともと抱いていた組織の課題感miit導入のきっかけや期待したことなどを、PLMシステムグループ統括のディレクターの高田豊さん、プロジェクトマネージャーの木下昌知さん、同じくプロジェクトマネージャーの紅野佑介さんに伺いました。

インタビューの後半では、実際に「miit」のセッションに参加した紅野佑介さん、府金育美さん、林佑樹さんを中心にお話をお伺いしました。

インタビュー前半はこちら

第二創業期を迎えるNEC「PLMシステムグループ」の組織課題と、miitに期待したことは? 〜 マネージャーと若手の視点から【前半】

– 「miit」セッションの概要

>>今回、NEC PLMグループでは、2回の「miit」セッションを連続して実施しました。

miitでは、あらかじめ「目的」に沿ったテーマを設定し、参加者にはWEBアプリにテーマに応じた写真を投稿してもらいます。それに対して写真心理学診断を発行します。その後、みんなで写真を見ながら対話をするというのが主な流れです。(投稿内容は、参加者のみが閲覧できるセミクローズドな環境)
参加者は、長らく顔を見知ってはいるけど、普段は一緒に仕事をしているわけではないということでした。

■今回の目的:
①今後の部内のキーマンとなる若手メンバーの相互信頼関係を築きたい(心理的安全性)
②若手メンバーの主体的な気づきや新しい発案が生まれるような土壌を築きたい(創造性)

■今回の写真投稿テーマ:
①ありがとうを感じること
②アートを感じること

■今回の対象者:
タスクフォース(有志の小集団活動)に関わる若手6名
・4チームの取りまとめ役:1名(紅野佑介さん)
・4チームの各リーダー:全4名(大場春樹さん、野口誠さん、林佑樹さん、山崎秀一さん)
・連携している別のタスクフォースのリーダー:1名(府金育美さん)

– 「miit」の第一印象

>>最初に、「miitをやる」と聞いたときの所感はどんなものでしたか?

府金:
私は、miitの実施時期が、とても忙しい時期だったんです。
紅野さんから誘われて「やる」と答えたものの、「コミュニケーションを活性化したくて、ちょっと取り組みがある」くらいの認識でした。

府金育美さん
府金育美さん

林:
木下さんが、部会で「miit」や写真心理学の話をしていたことが印象に残っていました。ただ、ぶっちゃけ、「写真心理学って何だろう?」「診断結果が出て、どう役に立つの?」と疑問に思う気持ちが大きかったかもしれません。

紅野:
一番最初に木下さんから「miit」や「写真心理学」について聞いたときは、「心理学っていうことは、自分の深層心理が浮き彫りになるんだろうな」とか「自己開示をする場なので、コミュニケーション活性化の良いきっかけになるんだろうな」といったイメージでしたね。

– セッション①「ありがとう」について

>>最初に、「ありがとうを感じること」の写真を投稿していただきましたが、この時の感想を教えてください。

府金:
「ありがとう」を探すのが結構大変でしたね。特に平日はリモートワークで仕事しかしていない状態なので。土日は外に出るので、見つけることが出来ました。ただ、写真を撮るっていう行為がそもそも新鮮だし、普段意識していないからこそ、人に感謝をするきっかけになりました。

林さん:
そうですね。普段、目にするものに対して「ありがとう」って感じることがないんだなと。かつ、目を向けると、感謝するものっていっぱいあるんだなと。意識していれば気づくし、意識しないと気づかないってことがあるんだと気づきました。

林佑樹さん

紅野:
プライベートでは、ちょうど子どもが生まれてすぐのタイミングで。奥さんとも、お互いに「やって当たり前」になっているから、感謝を伝え合おうって話してたタイミングだったんですよ。
これをきっかけに、ささいなことでもありがとうを意識して、終わった後も「ありがとう探し」を続けようって思いましたね。

 

– 写真心理学診断を初めて見た時の感想は?

紅野:
僕は「俯瞰的に見る視点」と「ものごとを構造化する視点」が強いと言われたのが印象的で。部分に注目するよりかは、全体を見て判断する傾向があるんだなと。自分の発言にもそういう傾向があるなと改めて気づきました。

府金:
そもそも「自分の創造性」について考えたことがなかったので、面白かったですね。普段、美術館にも行かないし、写真も全く見ないんです。そんな中で、自分自身の興味関心について「ここが低い」「ここが高い」というように分析されて、創造性という観点から自分を分析してもらったのが興味深かったです。

林:
診断の中の「視点を増やすためのアイデア」という記述部分が特に印象に残っています。「写真を撮る前に、何に感動しているのか言語化してみると、写真表現が変わるでしょう」とあって、それは確かにそうだと。言語化が苦手なので、新たな気付きでした。

 

– 写真対話で、印象に残っていることは?

府金:
何より、みんなのプライベートを垣間見れたのが楽しかったですね。コロナになって、本当に仕事上必要な会話のみで、雑談を全くしなくなっちゃったので。
写真からは、必然的にプライベートが垣間見られるので、インテリアの様子から「紅野さんの奥さん、おしゃれなんだな」と思ったり、林さんの意外な趣味を知れたり(笑)
飲み会でも、中々話せない内容だったから面白かったです。

林さんの「意外な趣味」に話が及ぶキッカケとなった写真がこちら

林:
最初は、他人の写真を見て自分が何を感じるんだろうと思っていたのですが、写真を撮った理由を聞いているときに「あぁ、この人っぽいな」って感じたことを覚えています。まさに、写真は「人となり」を知れるってことですよね。

紅野:
普通に「府金さん、登山まだ続けてるんだ」とか、「林さん、こんな趣味あるんだ」と思ったり(笑)。あと、山崎さんが家族の写真を載せてて、それまで家族のことを聞いたことがなかったのですが、「miit」をきっかけに、最近は子どもの話をたまにするようになったんです。

プライベートの話を、仕事中どこまでするかは人によると思うんですが、今のメンバーは本当に話さなくて。何かしら知ってると、打ち合わせに入る前にアイスブレイクで「府金さん、今度どの山登るの?」とか聞けていいなと思いました。

紅野佑介さん

林:
そういえば、この前、他部門のWEB会議の声がたまたま聞こえてきたんですが、「ボーナスの使い方は?」みたいなことを話してて。雑談というより、会議の一議題としての扱いだったのですが、そもそも、そういう話をするんだという驚きがありました。
仕事上の関係性を良くするために、あえてプライベートな話をするのはありだし、実際にやってる人もいるんだなと。

紅野:
ふざけた話をする、しないは二次的な話かもしれませんが、お互いの情報をオープンにして、コミュニケーションのハードルがお互いに下がるのは、良いことですよね。

 

– セッション②「アートを感じること」について

>>2回目のセッションでは「アートを感じること」というテーマで、1日1枚、7日間写真を投稿していただくプログラムを実施しました。こちらはいかがだったでしょうか?

府金:
毎日投稿するのは、大変でしたね。平日は本当に仕事しかしてないし、リモートワークなので家から出ないことが多い上に、そもそも「アート」というものに今までの人生で関わってこなかったので。苦し紛れに、そこらへんのものとかを適当に撮っちゃいました。結構絞り出す感じで本当に難しかったんですよ。正直、今でも、まだつかめてないです。ただ、今までやってこなかったからこそ、そういう視点で物事を見てみる訓練というか、練習の一環にはなったと思いますね。

府金さんが撮影した、バナナスタンドの写真。miitの写真一覧には、チーム内のセミクローズドな環境だからこそ垣間見れる写真たちが並ぶ。

紅野:
バナナスタンド見て、みんなで笑ったよね(笑)

林:
僕もそんなに家から出ないし、出ても、普段行くところは大体同じなので、特別性をそんなに感じません。そんな中で若干こじつけて撮りました。

さっき「言語化」の話をしましたが、アートとは、「何かをパッと見て感じるもの」だと思っていたんです。立川の写真がまさにそうで、パッと見て「あぁきれいだな」って感じて撮りました。

その理由を言語化するってすごく難しいし、そもそも何に自分が感動しているのか分からなくて。
ちゃんと言語化できてるやつと、こじつけているものと、あとは言語化した瞬間に冷めてしまうものがありました。特に芸術家肌でもないし、アートという観点で「ここがこう」と自分で分析してしまっていいものかと。

林さんが撮影した立川の写真

紅野:
僕も、「そもそもアートってなんだろう」から始まって、調べてみたんですよ。ただ、広すぎて(笑)。これという正解が見当たらず、ピンとこない中で、最近、若者言葉に「エモい」ってあるじゃないですか。多分「なぜか理由はよく分からないし言語化できないけど、なんかいい」っていう意味だと思って、「それでいこう!」と決めて取り組みました。

さっき、毎日投稿するのは難しいという話もありましたが、逆に、僕は毎日意識してやらないと、この感覚を忘れてしまうし、「アート」が見つからなかったかもしれないと思いましたね。

紅野さんが撮影した写真

結果的に、だいたい家の近所の景色が多く、あとは見た映画などを撮ったのですが、そもそも僕が今この家に住んでるのは、周りの環境の良さに惹かれてだったし、例えば映画も、あるポイントで、良し悪し、好き嫌いを判断している。それらを結構、本能的にやっているんだってことに気づきましたね。物事を直感で判断したり、評価する傾向も強いのかもっていう自己理解がありました。

そして、結局、「アートってこういうこと」という答えは、見つからなかったです(笑)

 

– セッション中に起きた内面的な気づきについて

>>「miit」のセッションは正解・不正解がなく、写真心理学診断も創造性が高い・低いという評価はしません。つまり、撮影する過程で、どれだけ多様な視点を持ったり、気づきが起こるかが醍醐味です。みなさん、釈然としない中でも、内側では色々な発見が起こっていたのかもしれませんね。

木下:
みんなの話を聞いてると、みんなの撮った写真が見たくなりますよね(笑)
他の人の写真を見て「これ、全くアートじゃないじゃん!」みたいに思うことはあったのかな?

府金:
私は、無かった!

私は、「アート」といったら「デザイン」のことにしか頭がいかなくて。
それで、バナナスタンドの形とか、紙コップのデザインに注目して写真を撮っていたんです。でも、みんなの写真には景色が写っていたり、野口さんの写真に、社員証を(破棄のために)バラバラに切り刻んでいる写真があって、「アート」という言葉一つで、こんなに多様な写真が出てくるんだってことが面白かったです。

野口さんの写真

人によって、ハートの感じ方が全然違うなって思ったし、話をしてみて、その人なりの理由があってその写真を撮った理由がそれぞれにあって。その人独自の感じ方を知れた、いい機会でしたね。

林:
「これ、なんでアートなん?」っていう写真、正直あったんですよ(笑)。ただ、撮った理由をちゃんと聞くと、「あぁ、なるほど。そういうところにアートを感じるんだ」って思いましたね。だからといって、自分主体だと、感じられるものと感じられないものがあって、それでいいのだと。千差万別だと感じました。

これらも、アートとして投稿された一枚(大場さんの写真)

紅野:
山崎さんの写真に皆既月食があって。僕と府金さんも載せてたんだけど、アプローチが全然違って、すごいきれいで(笑)。建築を学んでいた過去を知ったり、山崎さんのこだわりの、根っこにある部分を見つけた感じでしたね。

左から、山崎さんの皆既月食の写真と、紅野さん、府金さんの写真

野口さんの写真だと、パソコンデスクの写真を見たときに、物の配置へのこだわりがあって、目に見えている部分が整理整頓されていることが大事なタイプなんだと紐解いたり。

野口さんのパソコンデスクの写真

対話中に「あ、この人、だからこういうパーソナリティなのかな」っていうのを推理しているのが面白かったです。

仕事中に、「何でこの人はこういう発言になるんだろう」と腑に落ちないこともあったのが、その人の背景やその人なりの視点を知ると「あぁ、だからか」と納得できたり、相手に対して許容できるキャパが増えますね。

府金さん(※紅野さんと府金さんは同期で、社の中でも繋がりが深い)は、僕が思ってたそのままが写ってたので、それはそれで楽しかったです。

 

– セッション後の感想と、今後の展開

>>セッションの前後では、BeforeAfter診断を実施しています。こちらの定量的な結果では、創造性が2.2点から3.0点、協力関係が3.2点から3.9点に上がっていました。何か、定性的な変化は感じていらっしゃるでしょうか?

セッション2回目のBeforeAfter診断結果。セッション1回目のBefor診断では、創造性が2.2点、協力関係が3.0点だった。

 

府金:
あまり具体的な変化は感じていなかったのですが、振り返ってみると、いい体験だったんだなぁと思いました。新しく入って来た人たちと一緒にやってみるのも面白そうですね。

林:
セッションを始める前に、一緒にやるメンバーがどういう考え方を持っているか知れたらいいなと思っていて、その効果はあったと思います。

紅野:
キッカケづくりができましたね。自己分析という意味では、俯瞰的で構造的な視点は活かしつつ、「局所的にクローズアップしてみましょう」というフィードバックをもらったので、「あぁなるほど、そういうところは仕事のチャレンジ項目にしよう」と思ったり。

あとは、部内のどういうメンバーでセッションを実施すると、どういう相乗効果が出るんだろうと。
転職してきたメンバーや新人メンバーはもちろん、長いメンバーの中でも、自己開示が苦手な人がこれをやったらどうなるんだろうとか。中間層を交えたら、いい繋がりが生まれて仕事もスムーズになりそうだな、とか。

現時点で主体的ではない人、創造性を発揮できていない人、アピールが苦手な人たちを活性化していく必要があるので、そこをどうやって達成していけるのか考えている感じです。

木下:
皆さんの話を聞いていて、本当に「相手を知る」という意味で、すごく良かったんだな、と思いました。

プロジェクト遂行中など、何か困ったときに、相手の心の拠り所や、関心ごとがわかっていると、そこを起点に会話を組み立て直したりもできます。

私たちはプロジェクトを遂行する際に、リスクマネージメントをする必要があります。しかもリスクテイクは殆どなく、リスクヘッジする文化で生きてきています。今回のセッションを通じて、リスクヘッジをしなくても、もっとオープンにコミュニケーションってできるんだっていう体験が生まれたと思います。

自分自身に対しても「ポジティブな部分を見つめる」というクセができることで、いい心の流れを維持できると思います。それが、セルフマネジメントってことだし、それが自律の土台になり得る。

木下昌知さん

紅野:
管理職は、みんなコーチング研修を受けているんですよね。それでも、「でもさー」っていう否定クセが本当に根付いているのを感じています。

この研修では「イエス、イエス、イエス」というように、ポジティブに話が紡いでいくんですよね。そういう視点でも良かったです。そういう会話が体験できたし、一回や二回でクセづくまでは行けなかったですが、そういう会話の仕方が、まず達成できたので。

木下:
新しく入ったメンバーにも、グループに対しても、こういう遊び心があってポジティブなカルチャーであることを発信していきたいですよね。

高田:
なるほど。
新しいメンバーの中には、まだ直接顔を合わせたことがない人もいるんです。会食や懇親も、まだ計画しづらい状況だったりもするので、彼らも交えて、実施できると良さそうですね。