社員総数1200名分の1が、”写真対話”することで生まれる力 【コマニー株式会社 導入後インタビュー】

社員総数1200名分の1が、”写真対話”することで生まれる力 【コマニー株式会社 導入後インタビュー】

コマニーは、石川県小松市に本社を構えて全国展開する、パーティションメーカーです。社員数1200名で年商300億円規模。業界の老舗であり、さらに昨年からは未来を見据えた取り組みも始動。

具体的には「間づくり研究所」を2023年4月に発足し、代表取締役である塚本健太さんをはじめとする社員全員を研究員と位置付けて活動しています。

2023年8月に「miit(ミート)」を導入いただいた時を振り返りながら、その後の様子をインタビューしました。(インタビューは2023年12月1日に実施)

今回のインタビューには、以下の方がご参加くださいました。

代表取締役 社長 塚本健太さん
製造統括本部 生産技術 部長 土定(どんじょう)寛之さん
経営企画開発統括本部 経営企画本部 経営企画部 経営企画課 有江晴花さん
製造統括本部 生産技術 完成二課 坂田あゆみさん

オブザーバー:
経営企画開発統括本部 経営企画本部 経営企画部 部長 千葉倉司さん

 

人的資本経営に力を入れ始めたきっかけ

– 今回のmiitは、部署関連系を目的に経営層、経営企画部(部長・若手)、製造部(部長・中間層・若手)の総勢12名の皆様に参加いただきました。
人的資本経営を体現されている企業様だと感じているんですが、いつくらいから始まったんですか。

塚本:
大きなきっかけになったのが平成最後の日に行った「ネガティブワーク」です。ポジティブな方向を向くためにも、ネガティブな本音を出し切るのが大切だと判断して、各部署の代表に集まってもらってワークショップを開催しました。本音でやらないと、会社ってよくならないんです。

代表取締役 塚本健太さん

-建設業界の中でパーティションは最終工程なので、それらを「川下」と捉えて、自分たちの仕事に誇りを持てない向きもあったとのこと。

塚本:
「悲しい間仕切り…」
「まじ、キレる…」
こういったワードがたくさん出てきました。

ただ、ネガティブを出し切った後に「ビジネスモデルはパーティションをつくって売ることだけど、実際にやっているのは”間づくり”なんじゃない?」という気づきが生まれたんです。

その後コマニーでは、「間」を「二つ以上の物の間に生成される関係性のこと」と定義。さらに会社と社員の「間」にもしっかりと目を向け「物心両面の幸福」を追求するために研修にも力を入れています。
会社として「心の幸福」を追求しようと思ったら、教育に踏み込まないと実現できないんです。

間づくり研究会の様子。効果的な会議を題材にワークショップが行われた時のもの。

 

 

miitをいざ実施する時の反応や気持ち

– 今回のように部署横断でコミュニケーションをテーマにした研修が行われるのは初めてだったと思いますが、研修の話を聞いた時にどんな印象を持ちましたか?

土定:

実際の内容がどうのというよりも、ちょっと私が苦手にしているタイプの研修だと感じました。自分をさらけだすのは苦手なので、抵抗感を感じたのが正直なところです。
一方で殻を破らないといけないとう意識もあり、ワクワクも感じていました

製造統括本部 生産技術 部長 土定(どんじょう)寛之さん 。自己開示が苦手だと自己分析。

 

-今回のmiitを、経営者×経営企画部×製造部で実践したらどうかという発案は、経営企画部の入社3年目の有江さんの発案でしたよね。

有江:
ちょうど製造部と経営企画部の交流を深めたいタイミングだったんです。製造部向けの全社研修を一緒に企画していたのですが、一緒に仕事をしていてもプライベートがどうなってるとか自己開示しあうタイミングってなかなかなくて。
私は、自己開示し始めたらめちゃくちゃするタイプですが、自己開示してくれない人に上司でも部下でも苦手意識を感じます。

miitは、自己開示するのが苦手な人に写真を通して自己開示するきっかけを与えてくれるし、相手が自己開示してくれなくて困っている人には、それを乗り越えて、踏み込むきっかけを与えてくれる取り組みでした。

経営企画開発統括本部 経営企画本部 経営企画部 経営企画課 有江晴花さん

 

塚本:
有江さんが語ってくれたことは、数字上にも現れているんですよ。毎年社員の幸福度調査をやっていますが、製造の現場でがんばってくれている人たちの幸福度が低い傾向があったんです。それで、ぜひ製造部の人たちとやりたいと思いました。

 

miitをいざ実施してみての気づき

-実際にやってみてどうでしたか?

塚本:
目は口ほど物をいう、じゃないけど、写真は口ほどにものを言うっていうのが感想です。
何も関係性がないところで「さぁ、良いチームを作るために対話しましょう!」っていうのはハードルが高いんですよ。それが「写真を3枚出してください!」というところから始まるので、ハードルがすごく下がりますね。これのすごさは、やってみて気づきましたね。

 

坂田:
今回は「自分らしい写真」がテーマだったので、とにかく自分をイメージできるものを自分なりに考えて選びました。ただ、写真対話の時に「坂田さんらしくないと思った」ってみんなに言われたので、「みんなから見る私と、実際の私は違うんだな」「新たな一面を見てもらえたんだな」ってことを感じました。

製造統括本部 生産技術 完成二課 坂田 あゆみさん
坂田が実際に投稿されたお写真。3枚目のお花の写真から、繊細で可憐な一面が浮かびあがり、話題になっていた。

 

-土定さんはキックオフ会の時に、普段写真をあまり撮らないことをお伝えいただきましたが、どんな風に取り組んで頂きましたか?

土定:
ゴルフに行く予定があったので、まずその時に撮ろう!と決めました。自撮りに初めてチャレンジしたんですが、普段自分では出さない笑顔が出て。
誰かに写真撮られる際に、いつも引きつって笑ってる自分がいるんですが、自ら撮るときには照れながらも笑顔になれて。写真を撮ること自体で、気持ちの変化が生まれるものなんだってことを感じましたね。

息子さんたちと自撮りにチャレンジした土定さんの写真

-聞くところによると、以前は土定さんと有江さんの関係性があまり良くなかったといった話もありましたが、関係性に変化はありましたか?

有江:
200%くらい話しやすくなりました!実際に、土定さんのところへすぐに相談しに行くようになりました。「土定さんが信頼できる人柄か、そうでないか」ということではなく、「土定さんにこういう話をしたときに、わかってくれるかな?」という自分に対する不安がなくなった感じです。「何かしら返ってくるだろう。例え意見が違ったとしても同じ方向を向けるだろう」と信頼できるようになりました。行動変化というより無意識の変化を感じています。

実際のmiitの画面。一番乗りで楽しい写真を投稿してくれた有江さん。「人生ネタづくり!」と話す彼女の価値観が、写真からも伝わってくる。

坂田:
同じ製造部内でコミュニケーションをとるけど、しっかりお話しするには至らなかった方が、対話中に「育み系男子」ってあだ名を付けられたんです。すごく男らしくて一見こわそうなイメージの方が、お庭のお世話に一生懸命なエピソードを素敵な笑顔でお話しされているのを見たときに、人物像のイメージが変わりました

それまで会っても会釈くらいかなって感じの方達に「おつかれさまですー!」って自分からいける感じになれたのがすごくいいです。

「育み系男子」こと、海道正人さんのお写真。青々とした芝生に育つまでの紆余曲折がた様子が臨場感たっぷりに語られた。

 

塚本:
確かに坂田さんやmiitを一緒にやったメンバーはすれ違ったときに声をかけてくれるようになりましたね。社長っていう肩書きが邪魔をして気を遣われたり、孤独に感じることもあるんです。私の方からは当然声をかけるのですが、それはさておき、社員の方も私に近寄りやすくなったんじゃないでしょうか。

サックス奏者でもある塚本社長。対話では、サックス愛についても存分に語られた。

有江:
若手同士の間でもコミュニケーションの質が変化しているかもしれません。ご家族を大切にしてるエピソードとか聞けたので、「嫁が妊娠してて、病院行くっていってるから、ちょっと行ってきます!」「あぁ、行っておいで、行っておいで!」みたいに、気負わず話せるようになりましたね。

安井祐太さんのお写真。実際の家族の写真を目にすることで伝わってくるものがある。

土定:
個人的には、写真やデザインへのアンテナが増えました。例えばパワポ資料の表紙に使ってある画像について「この画像を使う良さはなんだろう?」「この模様にはどんな効果があるんだろう?」ってことが気になって質問したりだとか。
その時は「かっこいいから、これにしました!」って答えが返ってきましたけど(笑)。
写真についての分析(写真心理学診断の内容)が聞けたのもよかったです。

塚本:
写真投稿ルールに「撮影後のトリミングはNG」ってのがあったので、「画角にはどんな意味があるんだろう」って考えたりもしましたね。

撮影する際に、画角を気にしたという風景写真

 

miitはどんな人におすすめですか?

土定:
同じ部署の違うメンバーともやってみたいです。普段から相手の意見を引っ張り出すことは意識しているのですが、やはり壁をつくるし。「実はこう」っていう話が写真があるとしやすかったり、普段考えていることが見える良さがありますね。

坂田:
製造部の他の部署ともやってみたいですね。同じ部署以上に連携が難しいです。お互い仕事を抱えていて、でも何かトラブルがあったときに、どうしても横の部署に助けてもらわないといけない場面があります。お願いしづらいと思ったり、言い方で嫌な思いをしたりすることもあります。あらかじめ「こういう人なんだ」って分かっているだけで、「困ったときはお互いさまじゃん!」っていう雰囲気が生まれるんじゃないかと思います。

塚本:
今、経営戦略的にも、全社横連携の強化を行っています。従業員総会で1200名がZOOMで繋がって、全社の状況や部門の取り組みを発表したり、部門ごちゃまぜでクロストークの時間をとったりしているんですよ。そうすることで、やり取りの中にちょっとした労いの言葉が入ったりだとか、大切さを感じています。

さらに、miitをやるときに、楢さんに「経営者まで出てくるのは珍しい」って言われたけど、これ、どう考えても経営者こそ混ざるべきだと思いました。社員数が1200名にもなると、全員の名前と顔が一致するということはないです。でも「1200名をどうするか」ではなく、「1200分の1」に向き合わないと社員のことを幸せにできないですよね。その意識が、蘇りました。ひとりひとり輝くものが違う。背景が違う。みんな大事にしないといけない1分の1だっていうところに気付けましたね。

有江:
コマニーで、ナレッジシェアのことを「1人+1人は5にも10にもなる」って表現がよく使われます。もちろん1人+1人が1以下になることもあります。5にも10にもなるナレッジシェアは、「パーソナルの深い部分」でお互いに理解しあっているからこそ起きるんだと思います。

千葉:(オブザーバー参加だった経営企画部 部長が思わず口を挟む)


それって、表面的に見えている「1」と、そこに紐づいている潜在的に見えていないものが合わさることで、「5」とか「10」にもなるってこと?すごく良い表現をするなぁって、感心してしまいました。

塚本:
今、うちの会社にはひまな部署がない。みんなどうしても忙しい。そんな中でどうやって深くコミュニケーションできるのか?月に例えば2時間しかない限られた時間でどう深めるか?という中にmiitの旨みがありますね。
今後、miitのカルチャーがある程度浸透してきたら。「コミュニケーションの始まりは、写真の見せ合いから!」みたいなことになるかもしれません。

 

-ありがとうございます。そうなれるように頑張ります。また先ほど「社長は孤独だ」といったワードも飛び出し、気になってしまいましたが、そこへの貢献はできそうでしょうか。

塚本:
立場上、判断のつかないものが私のところに上がってきます。一番最後は私が責任をとりますし、絶対人には言えないような悩みを抱えることもあります。でも、誰しもが孤独なんだけど、そうならないようにみなさんと想いを共有したり、「みんなで幸せになろう!」「みんなで世の中の役にたとう!」って、言いながら、1200名分の1として一人一人がお互いに向き合うことで、孤独を払拭するエネルギーになるんでしょうね。

インタビュー後のふり返り

miitの事後アンケートでは「最初は、写真で一体何がわかるんだって思ってたけど、本当にひとりひとり全然違った」というものが多いのですが、今回もそんな声が上がってきました。導入前には「対話をして仲が良くなるのはわかるけど、それが仕事の成果にどう結びつくんですか」といった質問もよく受けるのですが、その答えが今回のインタビューの中にあるように思います。
ひとりひとりが、1分の1として自分が生きること。それを持ち寄って、周りの人と対話すること。潜在的なものも含めて、それらが足し算、掛け算されることで達成できることの大きさを、実感することができました。

ご参加くださった皆様、インタビューにご協力いただいた皆様、ありがとうございました!