京都の一大ビジネス拠点であり「イノベーションが生まれる”まち”」を運営する京都リサーチパーク株式会社(以下、KRP)。1989年に東地区が開発されて以来、現在では5.9haの土地にビル18棟が建ち並び、500の企業・団体、6,400名(※2021年4月時点)が入居しています。2021年4月、竣工後間もない10号館1階に交流を目的としたフードサロン「GOCONC」がオープンしました。オープン記念の一環として同年6月に「miit」のプログラムを導入していただきました。KRP内のコミュニケーションの活性化を担うお二人が感じていた課題、そして今回のプログラム実施後の変化についてお伺いしました。
- インタビューさせていただいた方
- 「京都リサーチパーク」には、どのような方々が入居しているのでしょうか。
- 多様なバックグラウンドの方々が入居する施設なのですね。入居者同士がコミュニケーションをとる機会はあるのでしょうか。
- ― 実際に企画を行う中で、課題に感じていたことはありましたか。
- 「miit」に興味を持ったきっかけを教えてください。
- 導入したプログラム内容と、参加した方の感想について教えてください。
- 実際に参加者として「写真ワーク」の写真を撮られてみていかがでしたか。
- 参加者みなさまの反応がはいかがでしたか。
- 写真をきっかけに、メンバーの方々の間にも会話が広がったのですね。
- 今後、今回のプログラムをKRP様のコミュニティづくりに活用したい点はありますか。
インタビューさせていただいた方
京都リサーチパーク株式会社 イノベーション創発本部 イノベーションデザイン部 ウェルネス統括部長 田畑 真理 様
京都リサーチパーク株式会社 イノベーション創発本部 イノベーションデザイン部 井上 雅登 様
「京都リサーチパーク」には、どのような方々が入居しているのでしょうか。
田畑: 「KRP」は、起業家、研究者、会社員、公務員、学生、クリエイターなど、所属も年代も異なる多様な方々にご入居いただいています。新規事業や研究開発などイノベーションが創発される場となるよう、私たちも日々ご入居者さまのサポートに努めています。
多様なバックグラウンドの方々が入居する施設なのですね。入居者同士がコミュニケーションをとる機会はあるのでしょうか。
井上: KRPではご入居者さま同士の交流もイノベーション創発に直結するため、弊社としてもコミュニケーションの活性化には非常に力を入れて取り組んでいます。
ご入居者さま同士の交流イベントは以前より取り組んでいたのですが、同じ地区内のご入居者さま同士であっても何らかのきっかけがなければ接点を生み出しにくいことが課題でした。もっとより日常的にもご入居者さま同士の交流が盛り上がるように、2018年12年に「たまり場@KRP」というスペースをオープンし、飲食を交えたイベントなど年間100回以上のイベントを企画していました。
― 実際に企画を行う中で、課題に感じていたことはありましたか。
井上: ご入居者さまは大企業からスタートアップまで規模がまちまちなため、特に個人の方に情報を届けることやつながりを生み出すことに難しさを感じていました。大手の企業の方々が研究者やスタートアップとつながりたい、またその逆のニーズもあったのですが、イベントだけではなかなか実現しきれずにいたんです。
また、イベントに参加した方からは「何を喋ったらいいのかわからない」という声もありました。交流しやすいように飲食を準備しても、何かしら相手との“話すきっかけ”がないと人と人との交流が進まないため、この点も改善が必要だなと考えていました。
「miit」に興味を持ったきっかけを教えてください。
田畑: もともと私が楢さん(miit運営会社 株式会社ナムフォトの代表)と、大阪ガス株式会社(KRPの親会社で、田畑様の出向元)のとある事業で知り合い、それ以来交流があり「miit」に関する発信も見ていました。ナムフォトがワコール「StudyHall」で開催したワークショップに参加した経験から、「写真」を題材にしたコミュニケーションはアリだと井上に紹介したのがはじまりです。
井上: ちょうどその頃の2020年から2021年にかけては、コロナ禍でこれまでのような対面や飲食を伴うイベント開催ができなくなっていたんです。イベントをオンラインに切り替えて100件ほど実施していたのですが、Zoom越しでは初対面の方同士でなかなか活発な交流を生むことが難しく「交流の媒介としての何か」が必要だと強く感じていました。そこに「写真」をきっかけにしたコミュニケーションを生む「miit」の存在を知り、導入してみたい!と思ったんです。
導入したプログラム内容と、参加した方の感想について教えてください。
田畑: 「『miitセッション』~写真心理学を使った、コミュニティビルディング~ 」と題したプログラムに、ご入居者さまなど計18名にご参加いただきました。
今回参加いただいたのは、20代から50代まで年代も所属も異なる方々。また、KRPが今年3月に包括連携協定を交わした京都精華大学の学生さんにも参加してもらいました。
プログラムの内容は、キックオフミーティングを行ったのち、参加者を4-5人の4グループに分けて一週間の間毎日一人一枚撮影した写真を投稿する「写真ワーク」を実施し、終了後にグループでの対話を行うという流れで進めました。
実際に参加者として「写真ワーク」の写真を撮られてみていかがでしたか。
井上: 今回は「当たり前の日常に光を当てる」というテーマで写真ワークを行いました。テーマを設定して写真を撮影する体験は初めてでしたが、改めて日常にあふれるさまざまな発見に気づくことができた一週間でした。
参加者みなさまの反応がはいかがでしたか。
田畑: プログラム最終日のグループ対話ではどのメンバーも他の人の写真に興味津々で、積極的に質問し合っていたのが印象的でした。
井上: 参加者は、他の人が撮影した写真を見て自分が一番好きな写真を選んでみたり、他の人がどんなシチュエーションで写真を撮ったかを想像して楽しんでいました。面白かったのは、KRP地区内で撮られたであろう写真を見て「この場所まだ行ったことないんです、今度行ってみます!」という声が上がるなど、他の人との写真の切り取り方の違いからKRP地区自体の再発見にもつながっていたようです。対話を通じて自分自身への新たな発見と、参加したグループのメンバーに対する理解につながっていたと思います。
写真をきっかけに、メンバーの方々の間にも会話が広がったのですね。
井上: そうですね。最終日の対話ではどのグループも初めて対面で話すメンバーがほとんどでしたが、写真で個々のパーソナリティを知ることができていたので、実際にオフラインで会った時にもスムーズに盛り上がることができたと感じています。
コミュニティをつくる上で大切なのは、オンラインでもオフラインでも「どうやって相手の人間性を知るか」だと思うので、写真を媒介にするというのは非常に有効ですし「miit」は効果があったと思っています。
【Before After診断の結果】 プログラムでは、プログラム実施前と実施後に個人の創造性とグループの関係性に関する独自の「Before After診断」を実施しました。
また、それぞれを構成する6つと8つの要素のほぼすべての項目においてプラスの変化がみられました。
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今後、今回のプログラムをKRP様のコミュニティづくりに活用したい点はありますか。
田畑: 今回参加された方々を軸に、より多くのご入居者さまにも参加してもらえる仕掛けをつくっていけたらいいなと考えています。例えば、今回の「miitセッション」で撮影された写真が100枚以上あります。曼荼羅のように連ねて写真展をしたり、人気投票によるいちおし写真をポストカードにしてみたりと、次に繋がる仕掛けを考えたいと思っています。
KRP地区をどう活性化していくか、この場所をどうやって盛り上げていくかは私たちの命題です。これからもご入居者さま同士がお互いのパーソナリティを知って安心して交流できる環境を目指し、「KRPに入居してよかった」と思っていただけるように工夫を重ねていきたいものです。