創造力って何?心理学の知見から考察。創造性を高めるアイデア25選付き

創造力って何?心理学の知見から考察。創造性を高めるアイデア25選付き

心理学の「知能」を分類したフレームから、創造性を紹介します。

イノベーションが必須の時代となり「創造力を高めたい」と考えるビジネスパーソンは多くなりました。創造力とは、creativity(クリエイティビティ)。「the ability to use your imagination to produce new ideas, make things etc(英英辞典:ロングマンより)」つまり、独自の発想や想像力をつかって、新しいアイデアや新しいモノ・コトを生み出す能力です。創造力に含まれる要素を、心理学の知見から紹介しつつ、創造性を高めるための方法をご紹介します。

 

創造力って具体的に何だろう?

創造性や創造力。イメージは何となく浮かぶけど、具体的にどんな能力かが分かりづらい。自分にはあるかもしれないし、無いかもしれない。イマイチ掴みづらいその正体を、心理学のフレームから覗いてみましょう。

人間には、様々な知能を保有しています。「知能の構造」について、これまで様々な学者が論を展開していますが、そのいくつかを紹介します。

 

結晶性知能と、流動性知能というニ分類から見る、創造性

結晶性知能とは、特定の文化から得た言語や情報と、それらの量・深さから成り立つ「インプット型」で得た知能のことです。対する流動性知能とは、現実世界にはないことをも、頭の中で仮定を立てたり、認知の中で比較したり、帰納するなどの高度な知的操作や問題を新たに解決する能力のことを言います。いわゆる「アウトプット型」の知能です。

 

私達が、常日頃「創造力」と呼んでいるのは、後者のアウトプット型の知能に近いように思います。ただ、ここでポイントになるのが、現実世界に依存しない中でこういった知能を働かせるためには、ベースになる結晶性知能(インプット型)が欠かせないということです。

ひたすら外界から情報や言語を蓄えていっても、それらを独自に編集したり、新たな仮説をつくるなどの知的作業をしないと、アウトプット型が高まることはありません。

逆に、ベースとなる材料、知的創造遊びをするためのインプットが足りていないと、アウトプットの質に頭打ちがくるのは早いでしょう。

【インプットの量×深さ】 × 【アウトプットの量×深さ】

この掛け算に、創造性を高めるヒントがありそうです。

 

歳を取ると、創造力は高くなる?低くなる?

「年をとったから、記憶力が低下した」「年齢が上がると、頭がかたくなって新しい発想ができなくなる」こんなことが聞かれる場面が多々ありますが、加齢と創造性には相関があるのでしょうか?

 

1930年の調査では、「20歳をピークに知能が低下する」という結果が出され、これは「知能の古典的加齢パターン」と呼ばれて、社会全般に広まりました。

ところが後に、この研究方法には誤りがあることが指摘され、1950年に行われた研究では、定点観測法(大学生を対象に、知能検査を実施。30年後に、同一人物に同じ検査を実施)がとられました。その結果、検査8つの尺度のうち、むしろ7つが上昇している結果が出ています。

加齢したから、知能が上がるというわけでもなく、つまるところ、中高年になって、知能(創造力)が上がるか、下がるかは個人差が大きく、生き方・使い方次第であることがわかっています。

 

特に、結晶星知能は低下が少ないとされています。これまでに積み上げた「インプット」は衰えづらいんですね。

 

16の能力群「CHC理論」から創造性を考察

結晶性知能と流動性知能という2分類ではなく、16分類で知能を読み解いたものがこちらです。

こうして言語化されたものを見つめてみると、

 

「視覚処理ばかり使っていて、嗅覚能力を意識的に使う場面が少ないな」

「日々インプットの量は多いけど、「領域固有知識(深さ)」が足りていないな」

「反応・決定測度が遅くて、タイミングを逃すことがあるな」

 

など、気付けることがあるのではないでしょうか?

 

これら一般知能は、特別な人だけが保有しているわけではありません。

誰にも備わっていることが前提です。ただしこの16種類の知能が、毎日の生活や仕事の中ですべて100%フル出力で使われている人というのは稀でしょう。

 

何か、自身の中で手薄になっていそうな知能を、意識的に使ってみるようなことをしてみると、新たな気付きが生まれそうですね。

 

認知的スキル×社会情動的スキルの掛け合わせから見る、創造性とは

最後にご紹介したいフレームがこちらです。

私達が社会の中で何事かをインプットをし、またアウトプットをするには、社会的な振る舞いが求められたり、自分を律して何かに打ち込まないといけないようなシーンもあるでしょう。

 

私たちは生活や仕事の環境の中で、認知的スキルを使って把握 →社会情動的スキルを使って対処→ 認知スキル→ 社会情動的スキル というループを繰り返しています。

認知的スキルは、前出の知能の話に近いですが、ここにどういう情動的スキルを掛け合わせるかで、圧倒的にアウトプットの中身が変わってきます。

 

創造力が求められるビジネスシーンにおいて、

「目標への情熱をもやし、周りの人への敬意を示し、自身が楽観的」な場合と、

「目標への意欲が低く、周りの人を見下し、自身が悲観的」な場合では、どちらのアウトプットが良質なものになるでしょうか?

 

前者であることは容易に想像できますよね。

自身の反応のパターンを見直してみることは、創造性を高めることに欠かせないのではないでしょうか。

 

誰でも簡単に、大人になってからでも、創造性を高めることができる

もし仮に、「創造力が著しく高い25歳」の人物がいるとして、その方がこの先の人生でインプットをせず、アウトプットをせず、社会的情動スキルを省みることがなかった場合、その30年後も創造性の高い人物として活躍できるとは思えません。

 

まずは、「今手薄になっている、新しい創造性(知性や感性)を使ってみよう」

という積み重ねで、誰でも簡単に、創造性を高めることはできます。

昨日は気づかなかったことに、今日は一つ気づくこと。昨日は知らなかったことを、今日は一つ覚えること。そんな地道な積み上げることで、創造力が高い状態にたどり着けるのではないでしょうか。

 

CHC理論を参考にした、創造性を高めるアイデア集

1.今の自分の気持ちを言語化し、−5点など数値化してみる

2.ストレッチや筋トレ、ヨガなどのクラスを受講してみる

3.目をつむって、全神経を集中させて、「モノ」に触れて、感じたことを言語化する

4.珈琲の香りを身体中に吸い込み、ゆっくり呼吸しながら味わってみる

5.音楽の「ドラムだけ」を集中して聞いてみる

6.すべてを「線」でとらえてデッサンしてみる

7.気になってるワードでWEB検索し、記事を20本以上読む

8.毎日400文字以上の日記をつける

9.気になってる分野の本を3冊読む

10.新しい分野の本を要約したりまとめたりして、知識化する

11.水族館で、じっくり魚の動きを観察してみる

12.ランチのオーダーをひと目で決める

13.洗濯物をたたむ、経費精算などの作業を時間を決めて取り組む

14.小学校3年生の遠足のことを思い出してみる

15.お得意先の会社の電話番号を記憶してみる

16.マイテーマ(幸せとはなにか等)について考察し、ブログを書く

 

社会情動的スキルを高めて、創造性を高めるアイデア集

17.「めんどくさい」「もういいや」という心理が芽生えたときに、少しがんばって集中してみる

18.新しいルーティーンを取り入れて、習慣化が起こる3週間、まずは取り組んでみる

19.目標を大きく書いて、壁に貼っておく

20.オープンマインドでいるように心がける

21.目の前の相手の尊敬できるところを、心の中でつぶやく

22.目の前の相手の気持ちを想像し、自分が力になれることを考えてみる

23.自分がこれまでに成し遂げたことを写真などを見ながら思い返す

24.まぁ、なんとかなるだろうと、まずは思ってみる

25.無理のない範囲で「今日やること」を決めて、やりきる(それを毎日やる)

 

参考書籍

「心理学概論」(著)繁桝 算男ほか

「心理学概論」(著)森 津太子、 向田 久美子

「基礎から学ぶ発達心理学 」佐伯素子・目良秋子・眞榮城和美・齊藤千鶴・三木陽子 (著)

 

 

本記事のライター

楢侑子  Nara Yuko

株式会社ナムフォト 代表取締役/ miit代表 / 写真心理学研究家

多摩美術大学で写真を始めて以来、写真家として活動を続けながら、mixi、TOKYO FM avexなどでメディアの企画・編集に従事。ライター時代はヒット記事を連発。さらにコミュニティデザインの仕事を経て2016年ナムフォト設立。ポートレート撮影を「究極のコミュニケーション」と位置づけ、撮影やワークショップを行う他、写真を使ったコーチングセッションを提供。BtoB向けのワークショップ運営やチーム立ち上げ、研修事業に関わっている。2020年、写真心理学という独自メソッドを用いた研修サービス「miit」をリリース。2022年より社会人学生として心理学の研究をスタート。